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Astro Life Stylist

 

以前、経営者のお客様からショッピング同行のご依頼をいただきました。

官公庁へ出向くことになり、

「この機会に、きちんとしたスーツを購入したい」

とのこと。

そこで私が選んだのは、少し艶のある紺色のスーツでした。

華やかに見せることが目的ではありません。

官公庁での商談という場を考えて、相手にきちんとした印象を与え、信頼していただけることを大切に選びました。

スーツが決まったところで、お客様がおっしゃいました。

「ネクタイは家にあるもので大丈夫だと思います。合いそうなものが2〜3本あるので」

確かに紺色のスーツです。

いろいろなネクタイに合わせやすそうに見えます。

そこで私は、お店にあったネクタイを2本ほどお借りして、実際にスーツに合わせながら、

「このような色でしたら、より信頼感が出ます」

「こちらのような色でしたら、清潔感が出ます」

とお伝えしました。

ご自宅に戻ってから迷わないように、というくらいのつもりでした。

「どうも合わない気がする」

それからしばらくして。

スーツがご自宅に届いた頃、お客様からLINEが届きました。

届いたスーツを着て、手持ちのネクタイを合わせてみたそうです。

ところが、

「どうも合わない気がする」

と。

色は、私がお店でお見せしたネクタイと似ている。

なのに、何かが違う。

そして、

「至急、追加のスタイリング同行をお願いしたい」

とのこと。

ネクタイを買うためだけに追加のショッピング同行をするのは、さすがにもったいない(笑)。

そこで、先日ネクタイをお借りしたお店をお伝えして、同じものを購入していただくことにしました。

「ネクタイは何でもいいと思っていた」

後日、そのお客様とお会いしたときに言われたのが、

「ネクタイは何でもいいと思っていた」

という言葉でした。

しかも、

「スーツは何でも合いそうな紺色だし……」

と。

分かります。

紺色のスーツなら、たいていのネクタイは合わせられそうですよね。

実際、「合わせられる」という意味では、間違いではありません。

でも、

「合わせられる」と「その人をよく見せる」は、同じではありません。

同じような色でも、色の微妙な違いや素材、柄などによって、全体から受ける印象は変わります。

そして今回大切だったのは、

「このスーツにネクタイが合うか」

だけではありませんでした。

官公庁での商談で、

どんな印象を相手に届けたいのか。

そこから逆算して、スーツもネクタイも選んでいたのです。

一度知ると、違いが見えてくる

この出来事で私が面白いと思ったのは、お客様がご自身で

「何か違う」

と気づかれたことです。

私が隣にいて、

「そのネクタイは合いません」

と言ったわけではありません。

ご自宅で一人で合わせて、違いを感じた。

ショッピング同行の前だったら、もしかするとそのまま出かけていたかもしれません。

でも一度、

「こう見える」

「こういう印象になる」

という違いを実際に見たことで、今まで気にならなかったものが見えるようになったのだと思います。

これは、スタイリング同行をしていて時々起こる、とても面白い変化です。

装いは「何を着るか」だけではない

私は、装いを整えることは、おしゃれになることだけが目的ではないと思っています。

特に仕事の場では、

「私は何を着たいか」

だけではなく、

「相手に何を伝えたいか」

も大切です。

信頼してもらいたい。

安心して話をしてもらいたい。

きちんとした人だと感じてもらいたい。

装いは言葉を発しませんが、会話が始まる前から、相手に何かを伝えています。

だから、ネクタイ一本だって「何でもいい」とは限らない。

もちろん、毎朝ネクタイ一本にそこまで悩む必要もありません(笑)。

自分にとって必要な場面で、何を選べばいいのかが分かっていればいい。

あの日、

「ネクタイは何でもいいと思っていた」

とおっしゃったお客様。

一度違いを知ったことで、ネクタイを見る目が少し変わったのかもしれません。

似合うものを知ると、それまで見えていなかった違いが見えてくる。

それも、装いを整える面白さの一つだと思っています。

 

では、「似合う」ものがいくつもあったら、何を基準に選ぶのか。
私が服を選ぶときには、その先にあるものも見ています。

→ 「似合う」だけでは、服を選ばない理由